タイにおける損害賠償請求は、主に「債務不履行」と「不法行為」の2つの法的根拠に基づいて行われます。
債務不履行とは、契約などで約束された義務を果たさなかった場合、または義務の履行が遅れた場合に、相手に発生した損害について賠償を求めるものです。たとえば、商品を納品しない、約束した金額を支払わないといったケースが該当します。このような場合には、契約内容に基づいて損害賠償を請求することになります。
次に、不法行為に基づく損害賠償請求があります。これは、加害者の故意または過失によって他人に損害を与えた場合に適用されます。加害者が注意を払っていれば防げたにもかかわらず、その注意を怠ったことにより他人に被害が及んだ場合にも法的に責任を問われることになります。また、損害賠償には、実際の物的損害に対する賠償のほか、精神的苦痛に対する慰謝料も含まれます。これは、たとえば不倫による精神的被害や名誉毀損などに対して、金銭的補償を求める形で請求されます。
損害賠償を請求するためには、加害者の行為と損害との間に因果関係があること、実際に損害が生じたこと、そしてその損害の程度が明確に示されなければなりません。さらに、タイの法律では請求できる期間に「時効」があるため、その期間内に請求しなければ権利を失う可能性があります。
実際に請求を行う際は示談交渉を経て合意に至ることもありますが、合意に至らない場合は裁判手続きに進むことになります。裁判では、証拠に基づいて裁判官が損害の有無や金額、加害者の責任について判断が下されます。
ただし、法律の専門知識がなければ、損害の内容を正しく整理したり、請求額を適切に算出したりすることは容易ではありません。示談交渉の過程でも、相手の態度によっては話がこじれたり、逆に脅迫と受け取られかねません。そのため、弁護士に相談し、法的なアドバイスを受けながら進めることが非常に重要です。弁護士が関与することで、相手方も請求を軽視しにくくなり、交渉や手続きがスムーズに進む可能性が高まります。
損害賠償請求は、単にお金を取り戻すためだけでなく、自分の受けた被害をきちんと認めてもらい、精神的にも区切りをつけるための大切な手段でもあります。タイでこの手続きを進める際には、冷静に法的根拠と証拠を整え、必要に応じて専門家の力を借りることが、最も確実で現実的な方法だと言えるでしょう。
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