今回はある企業で本当に起きたトラブルについて、このような場合経営者としてどう対処すべきかについて説明します。企業名をぼやかすためある程度フィクションを入れています。
新しい会計スタッフの入社
今回の事件の発端は、2名いた会計部署にてそのうちの1人が退職し、新しく入社した会計スタッフが不正を発見したことから起こりました。
この新しいスタッフが入社し、既存のスタッフから手順を教わりながら会計業務をこなしていきました。この新しい会計スタッフはある程度の経験を有していて会計知識は豊富だったためすぐに仕事を覚えてバリバリやれるようになりました。
以下、新しいスタッフをAさん、既存のスタッフをBさん、とします
昔からの不正を見つけた
Aさんが入社して数週間後、社長に2人だけで話したいことがあると伝えてきました。
Aさんが話した内容は、もしかしたら退職した担当者と既存のBさんが不正を行っていたかもしれないという疑惑でした。Aさんは書類の写真などを見せて、これらを社長やGMが把握してないなら不正ではないかと伝えてきたそうです。社長はこれを全く知らなかったため不正を確信しました。
Bさんを即日解雇
社長は驚いたと共に可愛がっていた従業員に裏切られたという思いから感情的になってしまい、Aさんからは「まだ大事にしないで下さい」「もっと確実な証拠を集めましょう」「もう少し慎重に進めましょう」「私が恨まれてしまいます」とお願いするのも構わず、直後にBさんを呼び出して今あるだけの証拠を突きつけ、その場で口頭のみで懲戒解雇を言い渡しました。
解雇を言い渡されたBさんも感情的になり「訴えてやる!!」と叫びながら出て行ったそうです。
Aさんも辞めてしまった
その日Aさんは業務時間を終えて静かに退社しましたが、その日の夜、社長宛にメールで退職届を送付してきました。退職届に記載されていた退職日はその日でした。
退職の理由
退職の理由として書かれていたことは、不正をチェックする機能が無い会社の体制を残念に思った、ということと、その場で解雇する社長の下で仕事を続けていく自信が無い、という内容でした。
会計業務が回らない & 新しい人材の募集
2名しかいない会計部署でいきなり2名とも辞めてしまい、社長は焦り、知人からの紹介で会計人材専門の弊社に連絡されました。
会計部署のスタッフが誰もいなくなってしまったので、『とにかく大急ぎで人が欲しい』、『給料は今までのスタッフの2倍出しても良い』、『すぐに業務を把握して回せる優秀な人材を』と、とにかく急いで優秀な人材を欲しいと言われました。
ここまでが弊社へご依頼をいただいた経緯となります。
弊社の対応
今までの2倍の給料?
ご依頼をいただいて驚いたのは、給料を今までの2倍出しても良い、という部分です。
もし今までの2倍の給料を出すことが適切ならば、今までの給料が相当おかしかったという事になります。しかしこちらの企業では他に多くの従業員もいて一定の基準で給与を決めているため、今までが相当おかしかったなどということはないはずです。
一般的に人材紹介会社は候補者の給与金額が高ければ高いほど紹介フィーが高くなるため、給与の高い人材を進んで紹介しがちですが、そんなことを続けていたら会社の信用も落ちるし日系企業全体のレベルが下がるのではと思います。
弊社はフィーが安くなろうとも『顧客満足を優先してリピート率&成約率の100%を目指す』という方針で業務を行っているため、一般的な人材紹介会社とは一線を画しています。
弊社の提案① 給与水準を守る
まず、2倍の給料なんてやめましょう、と提案しました。
御社内の給与水準に則った適切な金額にて人材募集をしましょう、という提案です。もし今回2倍とまでいかなくても本来の給与水準より大幅に高い金額で焦って採用してしまうと、将来的に必ず問題が出ることになります。もし、今回を機に社内の給与水準を見直して全体を引き上げる、ということなら問題ないと思いますが。
弊社の提案② 人材はじっくり選ぶ
次に、焦っているのはわかりますが、まずは焦っている理由を明確にしましょう、と伝えました。
今回の場合、会計業務を行える担当者がいなくなってしまったため、インボイスの発行や支払い等が滞り事業が停滞してしまう、というのが焦っている理由なので、それをとりあえず別の方法で回避すれば焦る必要はなくなり、能力も給料も顧客にとって最適な優良人材をじっくりと選ぶことができますよ、と伝えました。
弊社での会計業務把握 と 派遣
とりあえずの会計業務で重要なのは「売上の回収」と「支払い」。
特に「支払い」の中で一番重要な従業員への給与支払いです。
タイでは面倒なことに毎月の税金申告が必要です。ただし月次の税金申告は最悪遅れたとしても罰金を支払えば済む問題です。しかし上述した「売上の回収」と「支払い」の業務が滞ると、事業が立ちいかなくなる可能性まで発生する非常に重要な業務です。
本社へのレポートが遅れるなどの問題も起こりえますが、遅れてしまったら本社へ謝るという覚悟を持って下さい。
今回は取り急ぎ弊社からテンポラリーのスタッフを派遣し、絶対に遅延してはいけない業務を中心としてお客様の事業に一切の問題が発生しないように対応いたしました。会計人材専門である弊社だから出来ることだと自負しています。
会計事務所は助けてくれる?
会計事務所を利用している企業は多いですが、このような社内の会計担当者がいなくなったケースで相談しても、会計事務所は「急いで後任を探してください」か「とりあえず社内の他の従業員にやらせて下さい」と言うと思います。
会計事務所のスタッフも日々忙しくしているため急に顧客のところへ派遣するというのはほぼ不可能だからです。
社長が取るべきだった行動
今回こんなに大騒ぎになったのは、社長が感情的になってしまい、会計担当者に不正を突き付けてその場で懲戒解雇を言い渡したのが一番の原因です。これはタイの労働法的にも非常に危ういやり方です。
実は今回の不正に関して弊社も調査依頼を受けたので調査しましたが、いわゆる「不正」をしていたというよりも、上司にいちいち報告して許可を求めるのが面倒なため一般的には不正と思われてしまう手順でお金を動かしていたのではないか、というのが弊社の見解です。会計帳簿上でも社内の別部署の管理の数字でもおかしなことはなく、不正と言っても手順が正しくないという類のもので、横領での被害などはなかったのではないかと考えています。
社長ももう少し冷静に不正の証拠を集めて先に専門家に相談するなりをしていれば2人とも同時に辞めるなんていう大事は起こらなかった可能性が高いとみています。
社長が弊社へ連絡してくれて良かった
2人が同時に辞めてしまって、いきなり会計担当者がいなくなったため社長の焦りは相当だったと思いますが、これも冷静に考えていただければ、どんなに焦って人材を探しても、優良人材はたいてい現在仕事をしている人材のため早くても入社は面接後1か月以上先になること、さらに、焦って良くない人材を採用してしまうとまた別の問題が発生すること、などが容易に想像出来ると思います。
社長が最終的に弊社へご連絡をいただけたことで採用を焦ることなく、取り急ぎの業務は弊社からの派遣がこなしている間にじっくり人材を選ぶことが出来、最終的に社長が納得する優秀な人材を採用していただくことが出来ました。
業務改善も出来、引継ぎもスムーズ
弊社からの派遣スタッフは弊社マネージャーへ業務報告をし、それを私経由で社長にも報告するため、銀行口座の使い方、社内の書類の回し方、管理書類の改善、等々、弊社が気づいた改善すべき点を報告し、社長の許可をいただいて全て改善していくことが出来ました。
採用した新しい人材への会計業務の引継ぎも弊社から行いました。
会計人材専門だからこその現場サポート
弊社では会計人材専門として、会計人材の紹介やサポート業務を行っています。
人材紹介業務はもちろんのこと、人材派遣、会計業務サポート、引継ぎ支援、会計教育など、会計業務に係るあらゆる問題を人材業を中心とした視点でサポートしています。会計事務所は現場(御社内)でのサポートはほとんど行わないと思いますが、弊社は人材業を中心とした現場へのサポートを提供し、お客様のお役に立っています。
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