新卒の会計担当者 と 現金の扱い

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先日お客様企業より会計担当者の募集案件をいただきまして、弊社より新卒の候補者を紹介して採用していただきました。その候補者が仕事を初めてすぐに現金の扱いに関してトラブルがありましたので、そのケースを説明したいと思います。もしかすると日系企業のタイ支社ではよくあることかもしれません。

新卒の会計担当者を採用

お客様企業より会計担当者の募集案件をいただきました。その企業様はバンコク郊外にて約15名ほどで稼働している工場で、日本本社から来られている社長と工場長の日本人が2名いらっしゃいます。タイ人の事務員は通訳を含めて6名、そのうち会計担当者は1名という構成の小規模企業です。

現職の会計担当者が実家のある地方都市で仕事をするから退職することになり、後任の会計担当者を探すこととなりました。「会計業務は会計事務所にアウトソースしているから、特にスキルの高い人は必要なく、なるべく給与の安い人、新卒でも良い」というご要望でした。

前任者からの引き継ぎが可能

通常であれば弊社からお客様を訪問して実際の会計書類や伝票を見させてもらい、会計担当者としてどのような仕事があるかきちんと実務を確認してから候補者の選定に入ります。弊社から確実に業務をこなせる候補者を紹介するためです。しかし、現在はコロナ禍で訪問を受け付けていないとのことでしたので実務の確認が出来ませんでした。ただし、現職の会計担当者の退職予定まではまだ日数に余裕があるということで、早めに採用が決まればその現職の方から引き継ぎが受けられるため、事前の詳しい説明は必要ないということになりました。お客様から聞き取りをした情報を元に独自の採用試験を作成して人材の選定を行い、新卒ではありますが申し分のない人材を選んで紹介いたしました。面接は順調に進み、弊社が選定した候補者をご採用いただきました。

候補者が入社したときにはまだ前任の会計担当者の方がいらっしゃったので引き継ぎもスムーズに行き、1週間後、2週間後と弊社がフォローした際にも特に問題はなく、候補者も良い企業に入社できたと喜んでいました。

候補者からの相談

ところが、候補者が仕事を初めてから約1ヶ月がたった頃、候補者から弊社へ連絡があり、この企業にて仕事を続けていく自信が無いという相談を受けました。弊社の担当者もびっくりしてすぐに候補者に会いに行き詳しい事情を聞き出しました。悩んでいる理由は、会社内の現金の扱いが自分の責任範囲を大きく超えているから、というものでした。

現金の引き継ぎ

入社して前任の方から会計業務の引き継ぎを受けていたのですが、新卒で働いた経験が無いため会計書類や伝票類、税金の実務など初めてやることばかりで、普通の人より時間がかかってしまったようで引き継ぎ期間があっという間に過ぎてしまったとのことでした。そんな中、もう前任者が退職してしまうという日の前日になって、前任者より手提げの金庫を渡されて「今後はこの現金もあなたが自分で管理するように」と、現金に関する引き継ぎを受けたそうです。彼女がプレッシャーに感じたのが、その現金でした。手提げ金庫の中には7万バーツほど入っていたそうです。

新人にとっては大金

新卒で2万バーツにも満たない給料の新人が、自分の給料の3倍以上も入っている金庫を手渡されて「あなたが管理するように」と言われたのです。しかもまだ初任給すらもらっていない時期です。これはこの候補者がプレッシャーを感じても仕方がないことです。

社内では管理方法を変更してもらえなかった

しかも、自分はそんな大金を管理しきれない、責任を負えないと思い、まずはタイ人のマネージャーに相談して、その現金はマネージャーで管理してもらえないかと相談したそうですが認められなかったそうです。タイ人マネージャーは一度工場長に相談してくれましたが、その後工場長とタイ人マネージャーから「あなたが会計担当者だからあなたが管理しなければならない」と言われてしまったそうです。

候補者は自分では管理しきれないと感じて弊社に相談してきたのです。

日本本社では絶対にやっていないこと

日本に置き換えてこのケースを考えてみますと、給料20万円そこそこの新卒の新人に、会社のお金70万円を預けて「日々の支払い等はこれでやってね」「他の部署の支払いもこれで行うから」「お金の管理はあなたの責任だからね」という仕事をふっていることになります。日本では絶対にやっていないはずのことですが、なぜか海外の子会社ではこのようなことがよく起こります。

そもそも現金を持つ必要があるのか

そのお客様の社内で会計担当者がそんな大きな現金を持っていたのも、銀行が近くに無く、日々の支払いを現金でしなければならないことが多かったからというのが理由でした。工場の支払い総額からすれば7万バーツ程度は大した額ではありませんから、会計担当者がその現金を持っていたのです。しかし、現在ではタイでもオンラインバンキングも発達してきて現金を扱わなければならない場面も少なくなってきたので、社内に大きな現金を持っておく必要は無いはずです。

「会計業務は会計事務所」は間違い

「会計業務は会計事務所に任せているから」ということで、会計業務に関しては何も管理しなくて良いと勘違いされていませんでしょうか?

このお客様企業でも、まだ現金中心で支払いを行っていた10数年前から現在までずっと会計担当者が現金を持っていたのです。10数年間、社内の会計業務の見直しをしていなかったためにこのようなことが起こっています。

会計業務の8割は社内の会計担当者が行っていて、会計事務所が請け負っているのは記帳業務のみです。経営者は会計担当者が何をしていて、どう管理する必要があるかを考えるべきです。残念ながら会計事務所は考えてくれません。

社内会計業務の見直し

結局このお客様のケースでは、弊社がサポートして社内の支払業務のほとんどをオンラインと小切手に変更し、会計担当者の手持ち現金を5千バーツに縮小しました。もちろん、手持ちの現金を縮小しただけではなく、管理方法や管理帳簿、決済の仕方も明確に見える化を実施しました。

小口現金(Petty Cash)として会計担当者が手持ちの現金を持っていて管理しているのは普通のことですが、オンラインが発達した現在でも大きな金額の現金を扱っている企業が多いです。タイでは会計担当者がこの現金を丸々持って逃げるという大胆な犯罪の話はあまり聞きませんが(メッセンジャーが持ち逃げするケースは多い)、毎月ちょくちょく現金が合わなくて、その合わない分は「Unclaimed Expenses」などに計上されてうやむやにされていることはよくあります。ひどい場合には会計担当者が長らく自分で管理していると自分の都合よく使って良い現金だと勘違いしてしまうことがあります。

弊社では、会計事務所が見ていない社内の会計業務のサポートをしております。

適正な人材の紹介、会計業務が正常に行われているかのチェック、など、経営者が見るべきポイントを的確にアドバイスいたします。

是非お気軽にお問い合わせください。

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