タイ人スタッフがよく休む 、どうしたら休まないように出来るだろうか、という悩みを抱えている経営者の方も多いようです。今回はその問題の本質と、対策に関して説明します。
タイの文化、タイ人気質、タイの法律
日本人から見るとタイ人スタッフは本当によく休むという印象を受けます。スタッフが30人以上もいれば、毎日誰かしらが出社していなような状態になっている会社もあります。日本人にとってはおかしな現象でも、タイ人にとっては仕事を休むということはそんなに変わったことではありません。これは日本とタイの文化の違いです。ですので、日本人としては なんで休んだんだ と𠮟りたいところですが、叱ったところでタイ人スタッフには理解されないことが多いです。
病気休暇(有給)年間30日
タイで経営をされている方は既にご存知だと思いますが、タイの法律では従業員が病気で仕事が出来ない場合、その欠勤を年間30日までは有給にしなければなりません。会社が与える有給休暇とは別に与えなければならないので、会社の有給休暇が10日あるなら、病気休暇を含めると年間40日、さらに用事休暇なるものも含めると、年間43日を有給休暇として認めなければなりません。タイの文化が、しんどいときには仕事は休むものということが前提になっているので、法律もそのタイの文化を反映しているのですね。
公休も増えてきたタイ
弊社グループが始まった約20年前のタイでは、バンコクの会社でも土曜日が出勤日というところが多かったのですが、ここ数年で一気に様変わりしまして、現在ではバンコクの多くの会社が完全週休2日制としています。土曜日出勤としてしまうと新しいスタッフを募集しても人材が集まらない状況です。
さらに近年、タイ政府の発表する祝日や公休がやたら増えてきました。年間休日120~130日の会社も珍しくなくなり、上述した有給休暇も合わせると、年間最大で160~170日も休むことが出来ます。
タイの人件費は安くない
こんなに休みが多くなると日本だと1人でこなすような仕事量でも、バックアップのために2人態勢にしようという考えになり、結果人件費が膨らんできます。何とか少ない人員で業務をこなせれば、人件費を抑えることが出来るのですが、そのためにはタイ人スタッフになるべく休んでもらいたくない、と考えるのは当然のことです。
タイの人件費が安くないことは以下の記事でも話題にしました。
タイの文化を受け入れる
これらの悩みは日本人や日系企業だけでなく、タイ企業にも当然あるはずです。しかし、タイ企業の経営者の方々は当然タイの文化やタイ人気質をうまく受け入れて経営しています。というより、タイの文化やタイ人気質を当たり前とした前提で、疑うこともなく経営しているはずです。
日本人がタイにてうまく経営していくには、日本人から見たらおかしいと思うようなタイの文化やタイ人気質もきちんと理解して受け入れて、その上でどうしていくべきかということを考えて仕組みを作る以外には方法はありません。日本式を強要してもタイ人スタッフ全員が合わせることは難しいと思います。
対策 「休まなかったらプラス」
では具体的にどうするかという検討をしてみます。
基本的には、「休む」ということが前提なので、頑張って休まなかった場合にプラスを与えてあげるという方法が有効です。休まなかったらプラスがあるのだという認識を持ってもらい、そこに向かって努力してもらう、というやり方です。
たまに全く逆の「休んだらマイナス」のルールを作ってしまう企業がありますが、元々が休む文化なのですからこれは逆効果です。
皆勤賞を上手く使う
頑張って休まなかった場合にプラスを与えるルールをすでに持っている企業も多いと思います。そう、皆勤賞です。タイでは皆勤賞、皆勤手当ての制度を持っている企業が多いです。
ただ、その皆勤賞の制度を作ったのは何年前でしょうか?それから改訂されていますか?金額等そのままの企業が多いように見受けられます。
皆勤賞を改訂する
20年前からずっと皆勤賞は500バーツという企業があります。20年前からすると最低賃金も約2倍になり、タイ人の平均所得も大幅にアップしているにも関わらず、皆勤賞はそのままなのです。500バーツだと、20,000バーツの事務員にとっても2.5%分しかないので、もらえたら1回良い食事を出来るくらいなので嬉しいとは思いますが、もらうために必死に頑張ろうという金額では無いですね。
皆勤賞を見直し、現在の給与水準に合ったものに改定するだけでスタッフの出勤に対する意識が変わる可能性があります。
対策に費用をかけられるかを検討する
対策に費用をかけられるかを検討してください。例えば、人件費に対して5%、もしくは10%程度は費用をかけられる、増員することに比べれば安いもんだ、という感じで検討します。
費用をかけられるなら、上述した皆勤賞の改訂に使っても良いですし、社内教育セミナーなどを実施するのも良いかと思います。ポイントは増員が必要な場合と比較することです。
皆勤賞を思い切って増額する
ある程度の費用をかけられるなら、皆勤賞を思い切って増額するということも出来ます。例えば、毎月の皆勤賞を給与の10%とするのです。10%も給与が増えるならスタッフは出勤することに関して相当頑張ります。もちろんタイ国労働法の範囲内です。
皆勤賞に段階を作る
上述した皆勤賞の金額を上げる方法ですが、これには良くない面もありまして、一度休んだスタッフがもう皆勤賞はもらえないんだからと残りの日数は頑張って出勤しなくなるという面です。このことを避けるため、皆勤賞には段階を持たせて、いきなり一度の休みや遅刻で一気に減らすようなことをしないというもの大切です。
対策に費用をかけられない場合
対策に費用をかけられない場合は、皆勤賞と同じ考えですが、以下のような対策があります。
- 皆の前で上司が表彰する
- 出勤優秀者を発表、張り出す
- 皆勤賞をもらっていない人の分からプラスする
1はそのものずばりです。皆勤賞を本当に表彰します。皆の前で良い行いをしたと褒めることは結構効きます。そんな子供だましのようなと思う方もいると思いますが、照れずにやってみると好評を得たりします。
2は1と同じようなことですが、優秀者を発表して皆の見えるところに張り出すという方法です。これも1と同様効果は期待できますが、長期間やっていくと慣れてきてしまい元に戻ることもありますので、なにかのメリハリをつけることも必要かと思います。
3は会社としては全員が休まなかった際に払うべき皆勤賞ですので、皆勤賞をもらっていない人の皆勤賞分を、皆勤賞がもらえる人にプラスしてあげて皆勤賞の額を増やしてあげるという方法です。ただ、この場合は、はっきりともらえなかった人の分からのプラスと言ってしまうと、もらった人ともらっていない人の軋轢が生まれる可能性もありますので、そこは明確にしない方が良いです。
そもそも評価に反映しているか
上記では皆勤賞を上手く使うことを提案しましたが、そもそもとして、出勤率の良さをきちんと評価に反映させていて、それを当人へきちんと説明できているでしょうか?
ボーナス査定、給与査定、だけでなく、普段から面談を行って評価に関してその内容をきちんと伝えていれば、変な休み方をすることを防げるのではないかと思います。
弊社では、上述したような人事制度作りのお手伝いや、人事関連のサポート、評価制度構築のアドバイス、また、辞めさせたいスタッフがいる場合のご相談など、人事やタイ国労働法に関する様々なご相談をお受けしております。ご相談無料です。
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