VAT無しで購入しても良いの?

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タイで仕事を始めると、上司や会計担当者や会計事務所から、何かに支払いをした際には必ず VAT(付加価値税)の明記された TAX Invoice (税額票)をもらうようにと指導されると思います。

VATが入っていない領収書を出す業者がいる

もちろん律儀な日本人は 必ずこの TAX Invoice を出してもらうように相手に伝えると思いますが、中には VAT の記載のないレシートを渡して 「これで大丈夫だ」と言ってくる業者がいます。
本当に大丈夫でしょうか?

VATが無くても良い(交通費、郵送費、接待交際費、個人からの購入)

VATが明記されていない領収書でも問題ない場合がいくつか有ります。ここではその代表的なものを挙げてみます。

(1)交通費
(2)郵送費
(3)接待交際費
(4)スタッフパーティ

この他にもあるようですが、はっきりとこの場合は大丈夫というようにきちんとまとめてある文書が税務署からは出ていないので その都度税務署へ確認した方が確実です。(この場合はVATが必要ですとまとめてある文書はあります)
逆に言えば、上記以外の殆どは VAT の支払いが必要です。

(1)(2)は無記名のレシートをそのまま経費計上(損金算入)しても監査人からも税務署からも特に何か言われることはほとんどありません。(金額が大きければ指摘を受けるかもしれません)

(3)(4)は気を付ける必要があります。VATが明記されていない領収書、タイ語では「ビン・ングンソッド」と言われる領収書を受け取ることが多いですが、これにもルールがありまして、「ビン・ングンソッド」であっても、相手の名前、住所、TAX ID番号、こちらの企業名、住所、TAX ID番号、が明記されていないと損金不算入の経費(Unclaimed Expense)となってしまいます。

会社が払えたから大丈夫、ではない

この前受け取った領収書が経費として使えるかよくわからないが、会計担当者にその領収書を渡したところ、取りあえず会社からお金を払ってもらえたので大丈夫だったのだろう、ちゃんと会社の経費となったのだろう、と考えてしまいがちですが、実はそうでもありません。
経営者は特に注意が必要です。

法人税が高くなる

支払った経費が損金不算入とみなされてしまうと、その分会社が支払わなければならない法人税が高くなります。長くなってしまうのでここでは詳しい説明は避けまして、法人税がどれくらい高くなるのかという結果のみお伝えします。(知りたい方は是非お問い合わせください)

タイの法人税は、年度によって変わることがありますが、基本的には20%です。
1ヶ月間に接待交際費を10万バーツ利用したとして年間120万バーツ。仮にその全てが損金不算入となってしまった場合には、会社が支払うべき法人税は 24万バーツ も増加します。

売物をVAT無しで仕入れた場合 税金がもっと高くなる

次は売物の仕入れの際に VAT が付加されていない場合、どれくらい損をしてしまうかについて説明します。
仕入れの支払いに対して、万が一、名前も TAX ID番号 も入っていないような領収書(ビン・ングンソッド)を受け取った場合、結果としては支払うべき税金の額はかなりの高額になります。仕入れ額の支払いを 仕入れとして正しく計上出来ないからです。
この場合、売値が全て粗利益となってしまいますので、売値の20%が法人税に上乗せされることとなります。(下記の表)

仕入値売値粗利益法人税20%最終利益
(A)VAT有り業者から仕入れ100,000120,00020,0004,00016,000
(B)VAT無しで仕入れ100,000120,000120,00024,000-4,000
VATを正しく払って仕入れた場合 と 払わない場合 の比較

(B)の場合、仕入れ値は損金不算入となりますから 売値=粗利益 となり、これにかかる法人税分は売値から20%という(A)の場合よりかなりの高額となるので、結果的に「売れば売るほど赤字」という状態になります。
VAT に関する考えを間違えて、一見安く見える業者から仕入れたために、このような恐ろしい状態になっている飲食店なども多いようです。「VAT分安く買えて得した」なんて思っている場合ではありません。

弊社が会計業務やコンサルティング、会計のレビューを請け負っていれば、このようなことが起こらないようきちんと警告や指導を行います。ほとんどの会計事務所ではこのようなことをチェックせず、説明もしていないのが現状のようです。

輸入はもっと気をつける必要あり

輸入をして仕入れる場合、賄賂を使っての通関などは絶対にやめておいた方が良いです。仕入れの計上もできず、関税も支払わない脱税、買いVATも未払い、追徴課税により多額の税金を請求される、というようなことが起こりかねないので、きちんとした通関業者を使って正規通関を行うことをお勧めいたします。

個人からの仕入れの場合

しかしながら、仕入れ先が企業ではなく個人だった場合、その個人がVATを徴収することが出来ないから TAX Invoice をもらえないというケースがあります。その場合はどうするのか?

その場合には、たとえ発行される領収書が VAT を明記しない「ビン・ングンソッド」だったとしても、そこにきちんと、仕入れ先の個人名、住所、個人のTAX ID番号、こちらの企業名、住所、TAX ID番号を明記してもらうえばきちんと仕入れとして計上できます。もしくは、それらの情報が明記された売買契約書を作成するという方法もあります。
領収書または契約書をきちんと作成してもらい、仕入れとして計上できれば上述のような損をすることは避けられます。

会計事務所は中身が何であろうと気にしない

きちんとした TAX Invoice ではない場合、もう1つの問題が発生します。それは、会計事務所が領収書の中身を精査しなくなり、結果として不正をされる余地が増えるということです。
きちんとした TAX Invoice ではない場合、損金不算入の経費(Unclaimed Expense)となるので、その支払いが何に使われたかということはあまり重要ではなくなります。このような領収書が増えると会計事務所や会計担当者は中身をチェックすることなく損金不算入の経費に仕訳します。なぜチェックをしなくなるかというと、損金不算入の経費に対しては監査人も税務署も厳しくないからです。

他の領収書が紛れやすい

ここに、会社とは関係のない領収書を紛れ込ませるという不正の余地が生まれます。無記名の領収書でもすぐに損金不算入として計上することが常態化していると、個人的な支払いの領収書を紛れ込ませるのも簡単です。もちろん内部統制が取れている企業はそのようなことが出来ないシステムとなっていますが、小規模な企業、もしくは逆に組織が大きくて各部署の決済権が大きい場合など、不正が行われるケースが多いです。

会計レポートも正しくなくなる

損金不算入(Unclaimed Expense)の領収書が多いと、正しい領収書でさえも少し誤りがあったり、どの経費かよくわからない、という場合、会計事務所としては修正したり調べるのが面倒だから、どうせ損金不算入も多いからこれも損金不算入にしとこう、と、全く正しくない仕訳をする方向へ進みやすいです。その結果、正しい仕訳がされず 損金不算入の経費ばかりが膨らんだ正しくない会計レポートが出来上がり、さらに法人税も余計に支払わなければならないということになります。

まとめ、決算書の見るべきポイント

タイで働き始めたころを思い出し、なるべく TAX Invoice を発行できる業者から購入、支払いをするようにしましょう。そうすれば以下のような恩典に預かれます。

(1)法人税の節減
(2)税務署に睨まれない
(3)不正が起こりにくくなる
(4)会計レポートが正しくなる

会計事務所から提出される決算書や、会計レポートで、Profit and Loss (P/L) という書類の中の、「Unclaimed Expense」(または「Add Back Expense」や「Non Deductible Expense」)と書かれた項目を探してみましょう。それが損金不算入として計上されている金額です。

その金額が大きい場合は、より多くの法人税を支払わなければならないということですので、会計事務所(または会計担当者)になぜこの金額が大きいのか聞いてみて下さい。
「タイではこのようになる」という回答だけされたら、その会計事務所(会計担当者)は変えたほうが良いかもしれません。
損金不算入経費に仕訳されている実際の領収書を見ながら説明をしてくれる会計事務所(会計担当者)が、良い会計事務所(会計担当者)と言えると思います。

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特に飲食店経営の方々で VAT 無しの購入や仕入れを好む方が多い傾向にありますが、会社の利益や経営を考えると大変に危険なことです。
弊社が会計業の請け負い、コンサルティング、会計レビューなどを請け負った場合は、そのようなことなくちゃんと利益を出せるようにサポートいたします。
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